2005年11月、ADTさんから待望のシマノスーパーエアロチタン、テクニウム用大口径テーパースプールが
限定発売となりました。
ADTの福井社長さんと関係の深い海風さんから親交会の時にサンプルを頂いて時々使っていましたが、
いよいよ一次分の生産が完了し、販売される事になりました。
設計段階では前回のテクニウムMgの時同様に私にも相談をして頂き、テーパー角度をどうするかで
海風さんと検討しました。
今回も「5度程度のテーパー角度はどうか?」と打診もありましたが、確かに見た目は良く飛びそうに見えるものの、
最近は実釣ではPEの使用が大半であることから、あまりにも角度のきついテーパーでは
バックラッシュを誘発するだけ、逆に遠投性能には反映しない事を今回も説明し、
2度程度の弱テーパー、大口径タイプとしてもらいました。
その理由ですが、下の簡単な図で判るように、バットガイドの内径を頂点とし、スプールの下端径をあらかじめ
そのリールに装着可能な最大径として設定した円錐形を想定した場合、図のような長い円錐形となります。
仮にスプールの下端径を75ミリとし、バットガイドの内径を15ミリ、ガイドとスプールの下端までの距離を
平均的な1.5メートルとした場合、この円錐形のテーパー角度は糸を張って測定すると2度〜1.5度となります。
張りが有り、締め付け力の有るナイロンの道糸ならこれ以上のテーパー角度を設定してもバックラッシュは発生
しにくいものですが、張りが無く、殆ど伸びが無くてスプールへの締め付け力の無いPEの場合は糸が放出する過程で
バットガイドとの摩擦などにより、たるみが生じると容易にバックラッシュしてしまいます。
従ってPEの損傷によるクレームを怖がるリールメーカーはPEが多用されるキスの引き釣りをメインとして設計した
リールの場合はストレート又は逆テーパータイプのスプールを標準装着し、ナイロン用の5度程度のテーパー角度の
スプールはキャステイング競技用や未だにナイロンの道糸の使用率が高い大物釣り用として
オプションで販売される事が多くなりました。
しかし、ストレートタイプでは図からも判るように実質的には逆テーパー同様にエッジ部分との摩擦が大きくて
正テーパータイプに比べると飛距離落ちが有ります。要するにスプールエッジとの摩擦抵抗で
PEのバックラッシュの発生を抑えているのですが、バックラッシュが発生しない、竿を振った時にねじれたりせず、
スムーズに振り切れるベテラン投げ釣り師からすると、その飛距離落ちは気になるものです。
従って前端のエッジの僅かな抵抗だけで飛距離落ちが殆ど感じられず、且つスムーズにバックラッシユせずに糸が
放出される角度にテーパー角度を設定しますが、図からも判るように設定した円錐形の上下を短く、
言い換えるとこの円錐形のテーパー角度よりも大きく設定してもリールとバットガイドの距離は一定ですので
バックラッシュの危険性が高まるだけで飛距離には殆ど効果が見られないのです。
従って私は糸を使ってこの円錐形を作り、テーパー角度を測定して「2度〜2.5度に設定してもらったら
それ以上のテーパー角度は良く飛びそうに見えるけどクレームが増えるだけですよ・・」と
要望させてもらいました。 そしてADTさんでも設計され、前端は従来のストレートタイプそのまま、
逆に下端径はこのリールに収まるギリギリの径まで拡大され、2度のテーパー角度を確保されました。
従ってこのリールには限界の大きさに仕上がりました。
ベールとのクリアランスは0.5ミリ程度とギリギリの大きさで、↓
純正スプールとの比較では
全然違うリール用かと思える大口径になりました。↓
大口径なので超浅溝スプールながら0.8号のPEなら200メートル分がキッチリ巻けますし↓
、0.6号以下なら250メートルを余裕で巻き取り可能です。
他のスプールとの比較ではストレートタイプ同様にロングスカートとなっており、今回も硬質のアルミ合金の採用で
極限の薄さまで削り込んであり、自重は49グラムと50グラムを切って超軽量に仕上がっています。
色は従来の黒、シルバー、赤、青に加え、今回ゴールドが追加となりました。
何れも腐食に強いF−1のパーツ同様のアルマイト加工による着色で退色は皆無ですし、
素材もアルミ合金の中では最も腐食に強いA−6065合金。私もMg用をわざときちんとメンテせず、
釣行後に水洗いするだけで後は放置して毎週のように2年弱も使い続けてみましたが、PEを巻き換える時に
糸の下に侵入していた塩分や砂をさっと濡れタオルで拭き取るだけで、すぐに綺麗になりますし、もちろん錆の発生など
見当たらず、その防錆性能は素晴らしいものです。 金属スプールながら樹脂スプール同様の安易な手入れだけで
長年愛用出来、とても気に入っております。
また、今回のはテーパータイプなのでストレートタイプには無い巻き始め時の糸滑り防止のスリットが
Mg用同様に切削されています。
今回追加となったゴールドタイプはチタンのシルバーボディに映え、高級感溢れるものですし、
樹脂タイプに比べてハンドルに感じる微妙なアタリも剛性の高さからか僅かながら大きく感じ、
とても気に入りました。(^^)v
ベールアームとのクリアランスがギリギリなので遠投をする時はスプールを最前端に出すほうが
抵抗感無く糸が放出されます。私も投げてみましたが、Mg用テーパータイプと殆ど同等の使用感で、
Mg用より僅かに小口径ながら遜色は感じませんでした。 近、中距離なら最下端でも少し抵抗感は増え、
ベールアームへの糸叩きの音が発生しますが、問題なく使えました。
但し、ベールとのクリアランスもギリギリなので、ベールがたわんで変形しているリールはベールを
新品に交換するか曲がりをスプールと干渉しないように手で修正する必要があります。
シリコン系コーティング剤を薄く塗布してやるとツルツルと滑りが良くなり、
深みの有る色合いになり、更に高級感が増します。