セルロイドオモリ製作

近年は木と鉛のオモリを組み合わせた、いわゆる木オモリを使用してキス釣りをする方が増えました。

木オモリのメリットとしては木の浮力がオモリの重量を打ち消し水中での重量が軽くなります。

よってオモリと海底との接触抵抗が小さくなり、引き重り感が少なく軽快に引けると言うメリットと、

キスが引くとオモリが軽いので簡単にキスに引かれる方向に向きが変わって振動するため、

オモリに固定されている天秤の足にも大きく振動が伝わり、感度が高まります。

感度が高まった事でいち早くキスの居場所を知る事が出来るようになったので、

攻めのキス釣りが展開出来、トーナメンターにも人気のアイテムになっています。

木オモリは「天秤が立つから感度が良い」

「天秤が立つから仕掛けが底に這わずに海底から少し浮いた状態になり誘いの効果が高い」

と使っていない人の中には思っている方が居ますが、実際は木オモリで立つタイプは私が知る限り存在しません。

私もいろんな木オモリを大きなバケツに放り込んで

試して見たり、私以上に木オモリを愛用しているくにさわさんも、浴槽に数多くの木オモリを放り込んだそうで結果を聞きましたが、

何れも水中では鉛のみのムクオモリ同様に倒れて寝たままで、天秤の足も海底に接地したままです。

投げ易くてそこそこに飛ぶサイズで立つものは2人共未だにお目にかかっていません。

どうやら木は、仮に桐などの比重が軽い木材を使用しても

余程大きな、とても投げられ無いような大きな木の体積が無いと、重いオモリを立たせる程の浮力を得る事は出来ないようです。

よって天秤が立って感度が良いとか仕掛けが海底から少し浮いた状態になって誘い効果が高いなどと言う事を

木オモリに期待しても無理が有りますし、現実はそのような動きや働きをしていないのは木オモリをご使用の

皆様もご存知のとうりです。

そこで今回は実際に立つ天秤オモリを作ってみたら、飛距離、飛行時の安定性、着水音、引き易さ、アタリに対する感度、誘い効果などに

どのような効果が有るのか先ずは作って試して見る事にしました。

木に代わる浮力を得る部分ですが、ウキの自作用に売られている発泡素材の棒が

釣具店で販売されています。発泡スチロール製でとても比重が軽くて浮力が高く、

且つ結構丈夫で使えそうなので、↓2本入りで300円のものを購入しました。


長さは約40センチ程度で直径は海草天秤と同等の16ミリ。

これを適当にカッターナイフで切断し、取り敢えずビニールテープでオモリとセルロイドパイプを仮に接合して

どの位の長さならばオモリが立つのか実験。↓



すると25号のオモリの場合は11センチ、30号のオモリの場合は14センチのセル浮木を取り付けるとオモリが立つ事が判りました。

それ以下の短さにすると、一旦立ちますがユックリと寝てしまい、木オモリと同様になってしまうので、

先ずは25号オモリが立つセルオモリを作ってみました。

作り方は簡単、セルパイプはカッターナイフで簡単に削る事が出来るので、早速加工に取り掛かりました。

オモリは海草天秤のオモリ部分を流用する事にしましたので、先ず鉛部分と樹脂の帽子の部分を分離しなくてはなりません。

分離は意外と簡単で、画像は30号を分離しているところですが、

パイプカッターの刃を鉛と樹脂の境目に立て、カッターを回すと少しだけ隙間を開けられます。


その隙間にマイナスドライバーの先端を差し入れてこじると・・ガポッと外れて抜き取れます。

天秤の足は上部から押すと御尻の穴から曲げ止めの部分が少し出るので引っ張り、末端をペンチでカットして抜き取ります。↓

分離された海草天秤。カットした足は天秤の製作時に再利用するので捨てずに置いておきます。

次に11センチにカットしたセル棒の片側を9ミリの木工用ドリルでくり抜きます。

深さは↑のオモリの差込深さと同等にします。穴の大きさはオモリの差込部分と同等になるように加工します。

発泡素材をかなり薄くなるまでドリルで削ります。


jまた、穴のテーパー加工にこだわる方にはステップドリルの使用が楽に、綺麗に仕上がります。

これも最大径が9ミリのものを使用すると容易に、ものの3秒程度でテーパー穴が開けられます。


オモリに先程カットした天秤の足を差し込みます。輪が有る方を天秤の御尻の穴の側にして差し入れ、引っ張って止まったら、

オモリの差込部分の先端をペンチで潰し、輪の部分が抜けないように圧着し、また強く引っ張って固着させ、

抜けない事を確認します。

オモリに防水シリコンシーラントを塗布し、差し込んで固定します。シリコンは乾燥して接着するのに1日程度かかります。

注意点はここでセメダインなどの接着剤は使わない事。接着剤の種類にもよりますが、有機溶剤系のものは

発泡剤を溶かしてしまうので使えません。御尻の穴にもシーラントを少し塗り、穴も塞ぎます。

帽子の接着は発泡素材を鉛筆を削る要領でカットして加工します。↓先端にシリコンシーラントを塗り、緑色の樹脂の帽子を差込みます。

これで発泡材料と海草天秤が合体しました。

最後にステンレス線を曲げ加工し、輪の部分はステンレスハンダとフラックスを用いてハンダ付けをして補強します。

左は27号、右が25号です。どちらも水中で立ちますが、27号は海底のカケアガリや溝の位置が良く判り、

25号は何とか海底に沈む程度なので砂紋が大きい場所で使うと海底をなでるようにスムーズに引け、砂紋をバスターしてくれます。


でっ早速軸のステンレス線の末端に輪を作り、カッ飛び天秤と組み合わせる事にしましたが、このままではかさばるので、

セルオモリと天秤が分割出来るように、道糸が結ばれる輪を今までよりもスリムな形状に曲げてオモリ部分の輪の中を容易に通過

するようにしました。

天秤の製作には1ミリのステンレス線を使いますので別途購入しておきます。

力糸側のスイベルが結合する部分の輪を曲げ加工します。ハンダ付けして仕上げて・・・

オモリ側の輪の中を通過する程度の大きさにしておくと、携行時に天秤とオモリ部分の分離が出来、

天秤とオモリの組み合わせが自由に変えられますし、別々に収納する事で携行性も良くなります。

納竿時には別々に収納する事でかさばる事が無くなりました。

天秤の仕掛け側の輪を曲げ加工してハンダで補強し、スイベルを装着して仕掛けが容易に交換出来るようにしています。

天秤をほぼ中央部で曲げ、曲げ部分にハンダを厚く盛り付けます。水滴のような形になるようにハンダゴテでハンダを盛り付け、

冷却して仕上げます。

ビーズを通してオモリの輪がこれ以上天秤の仕掛け側に抜けないようにしています。

完成デス。さびいている時はこのような姿勢で引かれる事になります。.発泡材料がオモリの重量を相殺するので

海底をなでる程度で砂紋の影響も殆ど無く、とても軽快な引き感です。


でっ早速家から5分の神埼に行って投げると・・・先ず25号ですが、意外と良く飛び6色の手前まで投げられました。

飛行時は若干ブレが生じますが、安定した姿勢で仕掛けも絡まず思いの他良く飛んでくれました。

最も懸念された着水音ですが、ライナー気味に投げるとバシャッと大きな音が出ますが、フライ気味に投げると

海面に対してほぼ垂直になってから着水するため、海草天秤と殆ど変わらない感じでした。

期待の引き感ですが、これは期待どうりで、木オモリよりも更に軽く、27号では海底の凹凸が良く判り、カケアガリや溝も

見通せるように鮮明に判ります。25号はオモリの重量を発泡材料が相殺して海底の凹凸が殆ど感じられなくなり、

アタリのみが伝わって来る感じでした。

感度はいわずもがなで、カッ飛び天秤との組み合わせでは5色で食ったピンのアタリもかなり鮮明、恐らく天秤の足が海底と接触

していないか、僅かに擦れている程度なのだと思いますが、ユックリと引いている時は天秤が立っている角度が垂直に近いせいか

今までに無い高感度を味わえました。

逆に早く引くとオモリが道糸に引かれて寝てしまい、木オモリ同等の軽快な引き感に変化。

よってこのオモリはユックリと引いて誘う時に真価を発揮するタイプのようで、今日は20センチ級が何匹がアタりをくれましたが、

道糸のテンションを緩めるとキスがどんどんと沖の方向にオモリを引っ張り、また道糸がピンと張ってゴンゴン・・なんて事も有りました。

それだけ海底に対する接地重量が軽く、簡単に動きますので、最初に食って来た一匹のキスが群れに戻ろうとして

勝手に群れの方向に仕掛けを引っ張ってくれる感じも有り、良型も連で良く釣れました。潮が早い場所では流れ過ぎると思いますが、

緩い流れの時に積極的に流して釣りたい時は海底の様子も良く判り便利なオモリだと思います。

最後に巻き上げ時の浮き上がりの良さにビックリ。巻き上げにかかると、半色程度巻いただけで早くも浮き上がり、海面を滑るように

巻き上げられます。ジェット天秤よりももっと浮き上がりが早く、最近私は巻き上げの時に海底の砂紋の頭を天秤でトントンと叩きながら

回収するよりも、海面近くを早めに回収したほうが天秤の暴れによるバレが少なく、

且つ振動でせっかく群れているキスを散らさないようにも感じているので、この浮き上がりの良さは気に入りました。

下の画像は先日高感度と意外な飛びの良さに「海底で立っているのかな」と思ってしまった程驚いた

Tuskerさん自作の木オモリとの比較ですが、全長は少し長くなりましたが

軽量素材のお陰で細いのに浮力が高くて立つオモリが実現。もちろんどちらもブッ飛ばして釣る用途には向きませんが、

3色以内、特に波口でしか食わない場合などでも仕掛けが少し浮いて海底を漂い、誘い効果も期待出来、

威力を発揮してくれると思います。

次に30号を試しましたが、形状が大きくなったので空気抵抗が大きく、飛びは25号と大して変わらない上に

飛行中の姿勢のブレが25号に比べて大きく、もちろん着水音も盛大。

引いた感じもあまり軽快感は感じず、海中でも水との抵抗が大きく、フワフワした変な引き感でした。

浮き上がりだけは25号よりも更に早いのだけが取り得と言えるかもですが、やはり投げ用のオモリは27号で作った程度の大きさが

いろなん面でバランスが取れる限界サイズのようですね・・。

第二試作品テスト

って事でまたまた試作を繰り返し、

下の画像は2回目の釣行に携行したものです。これも試作のものでテープを巻いていますが、

テストした越浜はとても砂紋が大きく、北陸の波松海岸に匹敵する程の凹凸がある海底を敢えて選んでのテストと

なりました。

真ん中のものは水中で立たないタイプ。

特徴は最も良く飛びかなり強い向かい風が吹いていましたが、オーバースローで6色の糸が出たあたりまで飛びました。

しかし海中で寝た状態になるためにやはり砂紋の影響が少し感じられ、固定式天秤程ではありませんが、

砂紋の山を越える度に弱い振動が伝わって来ます。

利点は引く時に少し抵抗感が有るので溝やカケアガリの位置をハッキリと確認出来る事で、

海底が比較的平坦な場所で変化が有る場所を見付けるのに

便利なオモリです。

次に左の立つタイプの25号。これの引き感は素晴らしく、砂紋の凹凸に合わせてオモリが立ったまま

スムーズに上下に移動し、殆ど砂紋のゴトゴト感は感じず、アタリのみが超高感度で伝わって来ました。

実際は道糸に引かれるので直立はしませんが、釣行後に鉛の何処が海底と擦れて光沢が出ているか確認すると先端部分のみで

やはり引かれて斜めになりつつも立っているようです。

飛びもブレが殆ど無く、一直線に飛び、安定した姿勢のまま着水します。

超軽量のセルロイドを使う事で重量配分的に重心がヘッドに集中しており、

白いボディーがとても良く見えて着水時まで目で追えますが、長い姿からは想像出来ないスムーズな飛びです。

飛距離は立たない長さのフロートオモリより5メートル程度劣りますが、これもオーバースローで5色の糸が全部出る所まで

飛びました。追い風ならば十分に6色も引けそうで、思いの外良く飛んでくれました。

砂紋を乗り越える度にポーンと天秤が跳ねてしまうさびき感は固定式の天秤ではあたりまえに起こり、その跳ねが

キスを散らす場合や乗りの面でも不利になるようですが、このオモリでは何処を引いても滑らかなトレース感で、

砂紋を気にせず、アタリのみに集中して釣る事が出来ました。

最後は右の30号。最も長いのですが、前作よりも短くしてテストをしたものです。

このタイプも立つオモリで、当日は向かい風が強かったので一番飛びましたが、フライで投げても若干ブレて飛ぶので

垂直の状態で着水せず、着水音は大きく感じました。

オモリの重量が有るので、少し引いても斜めになり易く、殆ど海底に寝てしまうため、固定式天秤よりはかなり緩和はしていますが、

砂紋の影響が他の2本よりは大きく出てしまう結果に。

面積が大きいので波の影響も一番強く受け、感度もいまいちでした。これは遠投して流して釣る場合に使えそうですが、

5色以内ならあまり利点は有りませんでした。

従って通常の釣りで5色以内にキスが居る時はあらゆる面で一番左のタイプが優秀。

海底の変化を見付けたい時は真ん中のタイプ、遠投を強いられる時や向かい風が強い場合は右のタイプが良さそうですが、

殆どの場合は左のタイプで超高感度のキス釣りを楽しめると思います。

特に木オモリに対するアドバンテージは飛行時の姿勢がブレ無い事。木オモリは重心がヘッドから天秤側に

木材の重量分だけ少し移行するのと木材は内部の材質が均一である事が少ないので大概はブレて飛びますが

発泡剤オモリは重心が殆ど変わらずヘッドに集中したままなので、キャスティング時に一旦ブレても暫くすると

安定した姿勢に戻って一直線に飛行し、見た目よりはるかに安定して飛びます。ブレ無い事で天秤の足もフラ付かずに

仕掛けの絡みも殆ど発生しません。

次に先日頂いた西向さんの発泡オモリも投げてみました。

同じ27号ですが、偶然にも発泡材料の長さは私がテストして決定し、作っていたのとほぼ同等でした。

浮力と大きさ、飛行時の安定性など最もバランスが取れるのがこの程度の長さのようです。

投げてみて感じたのはやはり安定して飛び、着水音もデルナー天秤とほぼ同等でした。

引き感は私の海草タイプよりもオモリの径が大きいのと形状からか、僅かに重く感じ、逆にカケアガリや溝の存在は

西向さんの天秤のほうが良く判りました。

アタリの出方ですが、西向さんの天秤は海底ではバネ作用の無い一直線の半遊動なので

キスが引くままに伝わって来るダイレクトなアタリでマイクロピンでも確実にアタリを感じる事が出来ますし、

23センチがアタックして来た時は辛抱たまらず、まさに激信が味わえ追い食いをさせる為に辛抱出来なかった程でした。

逆に私の天秤は滑らかに海底をトレースし、凹凸やカケアガリの存在を知る引き感は薄れますが、これは発泡材料の長さを

少し短くする事で浮力調整し、ほぼ西向さんのものと同等の引き感となる少し短いタイプも作りました。

アタリは天秤のバネ作用が有るので、西向さんの天秤に比べるとややマイルドになりますが、

ピンでも良くアタリが出ますし乗りも良く、20センチ以上が来た場合も天秤がしっかりとアタリを受け止め、

激信にも少し落ち着いて対応出来ます。何れにせよ、あまりに高感度なので良型が来たら強いアタリが連続して出るので

固定式天秤に比べて辛抱がし辛く、連で掛けるのに苦労する程ですが、このあたりは今後の練習で

克服したいと思っています。


強いて言えば西向さんの天秤はジックリと海底の様子を探りつつ中小型でも確実にアタリを捕らえて数を釣るタイプ、

私の砂紋バスターは高速さびきでも軽快に引け、海底の凹凸が大きい場所でも気にせず軽快に釣るタイプで

手前のカケアガリが急な海底でも引き易く、良型を1匹1匹確実にゲットする時や激渋の場合にピンを狙って

波打ち際を丁寧にさびく場合にも意外と使いやすい感じました。

今回ほぼ完成型が出来ましたが、

オモリだけでなく、組み合わせる天秤の形体でもアタリや感度は変わりますし、今後もいろいろと試してみたいと思います。

次回の釣行でもどんな結果を出してくれるか、

メンバーにも使ってもらって感想を聞くのも楽しみです。

お化粧編

そして後日、発泡材むき出しでは真っ白で海中で目立つのと、砂と擦れたり何かにぶつけたりした時に簡単に凹んだり傷付いたりする

発泡材の欠点を改善する事にしました。

材料は100均ショップで購入したホログラムシール。幅5センチ、長さ7メートルで100円と激安でした。

これを発泡材料の周囲に貼り付けるとなかなか良い感じ。簡単にはキズが付かなくなりましたし、発泡部分をテープで締め付ける事で

強度UPも図れました。

何よりカラフルでとても綺麗になりました。こんなに派手でも海中では白よりは目立たずキスの食いも良好。

いろんな色のテープを巻いてオリジナルな砂紋バスターを作られ、楽しまれたらと思います。(~o~)