MGメンテナンス

私が購入したスーパーエアロMG、使用期間が3年目となり、春から初冬までは毎週のように使用、と言うより

酷使していますので、そろそろ完全オーバーホールが必要な時期になりました。

今まではグリスアップやアームローラーの分解清掃程度で使用して来ましたが、

内部のグリスは劣化する時期ですし、最近になって

1 回転時にギアのゴロゴロ感が発生し始めた。

2 ベールアームローラーからも巻き取り時にシャリシャリ音が出始めた。

3 スプール軸がなぜかガタ付き、巻き取り時にスプールが僅かに振動したりブレる。

と不具合も発生するようになりました。

投げ北チームでは私以外にも殆どのメンバーがMGを使っており、

使っている内に同様の症状が発生して困っているメンバーも居り、今回は解決法も探りながら分解点検と部品交換を

実施することにしました。

先ず症状別の解決法ですが、1のギアのゴロゴロ感は、使用時間からしてすでにギアが磨耗し始めている事が

経験上考えられ、マスターギアとピニオンギアを交換する事にしました。

2のベールアームローラーからの異音ですが、ここは簡単に分解出来るのでベアリングの錆びやグリス切れを

点検しましたが、A-RBベアリングは容易には腐食しませんし、2〜3回の使用毎にグリスアップしていますので、

クリス切れも考えられません。

なのに道糸にテンションが掛かった状態で巻き取ると「ゴーッキュルキュルッ」と異音が発生する事から、

どうやらベアリングに砂粒などの異物が侵入してスムーズに回転せず、異音が発生しているようです。

よってベールアームローラーの内部に有る2個のベアリングを交換する事にしました。

3のスプール軸のガタですが、これは原因が判らず、取り敢えず分解して原因を調べてから処置する事にしました。

そして部品の発注をします。先ずシマノのHPのパーツプライスリストから

テクニウムMGの
PDFファイル

http://fishing.shimano.co.jp/body/parts_list/01_spinig/308.pdfをダウンロードし、印刷します。


この分解図から、今回は61番のマスターギア組と48番のピニオンギア、

そして16番のアームローラー用ベアリングを2個発注しました。

注文をお願いする釣具店さんには印刷してマーキングした分解図を持っていくと

手配ミスが防げて良いと思います。

また、分解、組み立ての際にも間違いを防止するため、必ず分解図は印刷し、

良く見ながら作業する事が大切です。


注文したパーツの中で、マスターギア(1,200円)とピニオンギア(1,000円)は意外と安いなぁ・・と思ったのですが、

A-RBベアリングの価格の高いこと・・・(>_<)。

同サイズの市販開放型ベアリング鋼製のものは200円程度で入手出来るのに、

こんなに小さいミニチュアベアリングが一個1200円とはねぇ・・・(;O;)

内心は16番のベアリングを、全く錆びないステンレス製で、砂が侵入しにくい

両シールドタイプのベアリングに交換したかったのですが、

両シールドタイプで外径8ミリ、内軸径5ミリ、幅2ミリ寸法のものが市販汎用品には無い、と言うより、ベアリングは

大きさや用途、シールドのタイプなど、統一規格で決められているのですが、そのようなサイズの規格は

開放型のベアリング鋼素材のものしかなく、今回は仕方なく純正のA-RBベアリングを使う事にしました。

そして一週間後。頼んだお店にパーツが届きました。全部で4600円(税抜き)也〜っ(^.^)と高いですが、

買い替えや修理に比べると安いので仕方が無いか・・・。

今回の作業で使った工具ですが、精密ドライバー、モンキーレンチ、リール用グリス、オイル、スプレー式洗浄剤、

古タオル、ティシュペーパー、麺棒などです。

もちろんお気に入りのモリブデン入りダイワリールグリスや

レスポのチタンオイルも準備しました。


工具や部品が揃ったら作業開始です。。

以下パーツリストの部品番号と部品名を参照して

分解組み立ての説明をします。

先ずは届いた部品を開封し、鉄粉やホコリを嫌うギアは組み付け前に洗浄しました。

ベアリングにはベアリング用グリスを塗布し、なじませておきます。

分解前のMG。長期の使用で汚れも目立ち始め、

先ずは洗浄剤を吹きかけて砂粒や染み出したグリスを洗い流します。

お次はハンドルの取り外し。

モンキーレンチと細い♯2のドライバーを使って分解します。分解したパーツは一個づつ洗浄剤で洗い、

ハンドル部分、回転枠部分など、おおまかなブロック毎に紙の上に並べておき、

組み立ての時に間違わないように分別しておきました。

スプールを外し、その下の回転枠を外します。これらの部品は砂粒が沢山付着していましたので丁寧に

洗浄しておきます。

次は85番の本体ガードを42番のネジを緩めて外します。63番のフタを固定しているネジ6本も緩め・・・

フタを取り外し、60番の再利用するベアリングを取り外してから、内部に付着したグリスを洗浄します。

50番のOリングや86番の本体ガードもこの時点で外れますのでこれも洗浄します。

いよいよリール内部が見えて来ました。マスターギア組はこの時点で簡単に抜き取れます。

リール内部はダイワのモリブデングリスがタップリと入っているので全て洗浄剤で洗いつつ分解を進めます。

マスターギアを抜き、反対側のフタもネジを緩めて取り外すとリールも骸骨(^o^)状態になります。

ガタが出ていた12番のスプール軸を調べると・・・軸の支え部分にもガタや隙間は無いし、???と首をかしげつつ

取り敢えず軸を抜き取るべく、74番の2本のネジを緩めようとすると・・・何とこのネジが2本共緩んだ状態でした。

58番のクロスギアに噛み込んで上下動する73番の摺動子とスプール軸をこのネジで結合しているのですが、

こいつが2本共緩んでいたため、スプール軸がガタ付いていたのです。 原因が判ればつまらないトラブルだった訳で、

ネジをしっかりと締め付けると、ガタは全く感じられなくなり問題解決。(^^)v 


リールのトラブルで意外と多いのがこの摺動子のトラブルで、このまま我慢して使い続けていると、摺動子やクロスギアが

摩擦で偏磨耗したり、摺動子のピンが折れたり、スプール軸にキズが入ったりと重症のトラブルになります。

今回は早く気付いたのでネジに「ネジロック」と言う緩み止め塗料を塗り、

強く増し締めしただけで解決出来ました。本来緩み止め塗料で緩み止め処置が

してあるのに、それが2本共緩んでしまったのはやはり酷使が原因なのかなぁ・・(>_<)

ここまで来たらリール内部の分解も最終段階、92番のウオームギア側ガイドをネジを緩めて外し、

90番のクロスギア用ウオームギアを抜き取るとピニオンギアが抜き取れる状態になります。

クロスギアを抜き取り、再利用する47番のベアリングを抜き取り、分解は終了。

新しいクロスギアとマスターギアに交換し、ダイワのモリブデングリスとチタンオイルをギアやベアリングに塗布しつつ

間違いの無いように組み立てて本体の分解点検、部品交換は終わりです。

ギア交換当初はギアの歯面の「あたり、なじみ」がついておらず、回した時に何かザラ付いた感触ですが、

数分程度空回ししている内にどんどん感触が良くなって

本来のツルツルッとした氷の上を滑るような回転感に変わります。

ギアの歯面どうしの「あたりやなじみ」が良くなったら再度本体フタを外し、汚れたギア歯面のグリスを洗い流し、

再度グリスを塗布してやると、ギア交換当初時に歯面から発生する金属粉を除去出来、

長年使用しているとギアの歯面の磨耗や回転感に差が出ます。

ギア交換初期のグリス交換は面倒ですが、車でも慣らし運転が終わったら一旦エンジンオイルを交換するほうが良い

のと同じで、リールも同様ですな・・・。

次は3番目の不具合であるベールアームローラーベアリングの交換です。 ↓の部分は海水や砂にさらされ、

高回転する部分でリールにとっては最も過酷且つ損傷が起こり易い部分なので、

全ての部品を洗浄、グリスアップします。

実際に拡大して良く見ると・・・↓アームローラーとアームローラー受けの間の僅かな隙間にも

海水が蒸発して残った塩分や砂が詰まって酷い状態ですな・・(>_<)

先ず26番のネジを緩め、ベールアームローラー部分の部品を全て取り外して洗浄し、並べて乾燥させます。

↓の画像は洗浄前で、1個1個、丁寧に洗浄します。小さな部品ばかりなので、

紛失しないように注意しつつ作業を進めます。

新しく購入したA-RBボールベアリング2個。片シールドタイプで下の画像のように、

片面は防塵の為にシールドしてありますが、

もう片面はベアリング内部の鋼球がむき出しです。

先ずベアリングにグリスを塗り、指でつまむようにしてグリスを鋼球になじませます。

そしてベアリングのシールド面側が.17番のアームローラーブッシュのフランジ側になるように挿入します。

フランジ側は海水や砂にさらされ易いアームローラーの外側になるので、

こちら側に異物が侵入し難いシールド面が来るようにします。

ベアリングをきっちりと挿入したら、防塵の為の15番のローラーベアリングシールをはめこみます。

そして18番のベールアームローラーに片側のアームローラーブッシュを挿入します。画像右側の

14番のアーム固定軸にもグリスを軽く塗ります。

アームローラーには方向性が有るので、道糸が掛かる溝がテーパー状になっている側を上側にして挿入します。

この方向性を間違うと「糸よれ防止機構」が全く役に立たなくなるので注意します。

下画像右側の19番のローラーベアリングカラーにもグリスを軽く塗り・・・

ローラーベアリングカラーを軸に挿入します。↓

そしてもう片方の17番のアームローラーブッシュ、20番のアームローラー受けをセットします。

↓の左側の画像はアームローラーの方向性を間違っており、右側が正しい組み方です。


最後に26番のネジでベールアームに取り付けて作業はおしまいです。酷い状態だったこの部分も綺麗になり、

ベアリング交換で音の発生は無くなり、とてもスムーズに回転するように修復出来ました。

全てのメンテナンスを終えたMG。作業時間は約1時間掛かりましたが、キスシーズンを前にして

いつでも出動できるように整備出来ました。(^^)v リール全体はアーマオール等の

シリコンコーティング剤で綺麗に拭き、新品同様の美しい輝きを取り戻しました。


以上、今回はMGのメンテナンスを行いましたが、このリールはスーパーエアロチタンに比べて構造が簡単で、

内部の部品も大きめ、部品点数も少ないので比較的容易に整備出来たと言うのが作業後の感想です。

部品の加工精度は以前のリールに比べて格段に良くなっているようで、組み付けさえ間違わなければ

ガタや異音のトラブルも無く、一発で初期状態に戻せるリールです。

さてっ新品同様になったリールを眺めつつ、来るキスシーズンを心待ちにしながらコーヒータイムとしますかなっ。(^.^)