海岸で釣りをしているといろんな方向から風が吹きますが、
沖から陸地に向かって風が吹く(向かい風)の場合と
陸地から沖に向かって風が吹く(追い風)の場合とでは海水の流れまでも影響し、
魚の釣れ具合にもかなり影響するようです。
北近畿では元々潮汐の差が少なく、海流も弱い為に、この風向きによって海表面の流れが発生し、
特に浅い場所に泳いでいるキスやカレイは影響を受けます。
先ず沖から陸に向かって吹く風ですが、
北近畿では海岸が北に面している為に北西から北東方向からの
風の場合ですが、判り易いように図で説明します。
沖から陸に向かう風で海面の太陽で暖められた軽い海水や日本海を流れる暖流である対馬海流の
暖かい水は沖からの風に押されて海表面を陸に向かって流れ、
波打ち際で反転し、対流で海底に沿うように沖に向かって流れてゆきます。
暖かい水を好むキスなどは陸地から海底に沿って流れて来る暖かい水に向かって
沖の深い場所から浅場に寄って来ます。
魚は海流に逆らって上流に向かう性質も有り、北からの風の時は
魚が沿岸近くに寄り、暖かい海水でプランクトンも活性化し、魚の活性もそれに伴って高まります。
逆に陸から吹く南東から南西方向の、北近畿では追い風の時は下の図のように、
海表面の海水が風に押されて沖に向かう為に北方向からの時とは逆の対流が発生し、
沖の深い場所の冷たい、栄養分の少ない深層水が海底を沿うようにして陸に向かい、
波打ち際近くで反転し、海表面を沖に向かいます。海表面に出た海水は暖かい南風で
暖められつつ沖に出てゆきますが、温度が上昇するのはかなり沖に出てからで、
キスなどが少ない水深が有る、投げ釣りからは狙えない
射程距離よりかなり遠い海域になってからです。
沖の深い場所の栄養の少ない冷水がどんどんと波打ち際で沸き上がるような対流で、
投げの範囲内はプランクトンの発生も少なく、魚も低水温とエサの少なさで活性が下がりますし、
流れに逆らって泳ぐ為に、沖に向かってどんどん深場へ落ちて行ってしまいます。
ここまでの説明で「冷たい北風が吹くとキスの活性が下がるのでは無いの?」と思われる方も
おられると思いますが、実は海中ではキスが好む流れが発生しているのです。
実例として北近畿の漁師さんは南風が吹くと、陸からの風でベタ凪なのに、
「今日は不漁だぁ」と漁を休む人が多いのです。 逆に、秋の例ですと、浜詰海岸など、
丹後半島の浜で落ちギスを狙っていて、北風が吹いてかなりの高波で寒いのに、
キスは不思議と1色付近に群れている・・と言った事も北風にはキスを浜に呼び寄せる「力」が
有る訳です。
また、春に暖かい南風が吹き、フェーン現象で気温はどんどんと25度程度まで上がり、
「水温が上がってキスに良さそう・・・」なんて思っても水温はちっとも上がらず、
オモリを持つと、とても冷たく感じる事があります。このような時は沖の深い所から冷水が
湧き上がり、押し寄せて来ている訳です。
このような現象は、外海に面した沖合いが深い海岸で顕著に現れますが、逆に
浅い湾内や沖合いまで浅い砂浜では余り風の影響を受けず、全体が浅い湾などでは
対流も起こらず、風向は余り気にする必要は有りません。
北近畿では浜詰、葛野など久美浜から伊根にかけての海岸や
舞鶴周辺なら由良や神崎、三浜、野原などが風向に左右される釣り場ですし、
全体に浅い宮津湾や湾口が狭い伊根湾、そして沖合いまで浅い
高浜の難波江、若宮などは影響が少ないと言えます。
風向が変わると海流も変化し、潮目が発生して急に魚の活性が高まったり、
全くエサ取りも居なくなったりと北近畿では潮汐の差が少ないせいで、
風の魚の食いに対する影響が太平洋側よりも強く現れます。
もちろん海が大時化となるような強風下ではこのような事はあてはまらないと思いますが、
この現象は北近畿だけでなく、北陸の広大な波松や三里浜、そして山陰の弓ヶ浜などでも
強く現れるようです。適度な北風が吹き、ザザ波程度なら魚の活性が高まり良く釣れ、
逆に南から風が吹き、ベタ凪の日は魚の食いは今一つとなる傾向にあり、キスだけでなく、
浜からのイシガレイやスズキ狙いの時でもそのような傾向にあります。