カッ飛びセンシティブ天秤の製作

昨今のキス釣りで使われる天秤は高感度を求めて木オモリなど、海中での比重を軽くした天秤や

オモリと天秤が固定されていなくて自由に折れ曲がる天秤などが開発され、今まで感じ取れ無かった繊細なアタリをとらえて

キス釣りをする釣り人が多くなりました。 トーナメントにおいても天秤が高感度であればいち早くキスの居場所を確認出来ますし、

100メートル以上投げてピンギスしか居ないような状況下であっても、伸びの少ないPEラインと高感度天秤を併用すれば

アタリを感じながらキス釣りが楽しめるようになり、キスが掛かっているのか

掛かっているのか判らないままに延々と仕掛けを引かなくても良くなりました。

しかし総じて高感度天秤と呼ばれるものは従来の固定式天秤と比較すると、複雑な形をしていたり、

形状的にもオモリ部分が長かったり大きくなったりと空気抵抗が大きく、

飛行中の姿勢が不安定だったり、飛距離面での不利な面が有り、

遠投〜超遠投には向かないものが多くありました。

また、木と鉛を接合したオモリなどはプロの手作りで総じて高価ですし、素人が作るには手間が掛かり、製作が困難でした。

そこで私もいろいろと天秤については過去から模索していましたが、

オモリの部分については素人ではなかなか良い仕上げや形の物の製作が難しく、鉛の鋳造にしても鋳型の製作などは

専用の工作機械で製作されるプロの仕事には素人ではなかなかかないませんし、

私も経験がありますが、容易に美しい仕上げの鋳造品は作れません。

今は自作しなくても安くて高性能、形も素晴らしい良く飛ぶオモリが多数市販されていますし、今回は

既製品の天秤オモリを改造する事にしました。

高感度と言えば全遊動式が最良ですが、

飛距離面や仕掛け絡みの面で不利ですし、固定式は飛距離は抜群ですが、感度はキスがアタリをくれてもオモリの重量が抵抗となって

アタリを殺してしまいます。従って私はキャスティング時は固定式、さびく時は全遊動式に近い半遊動の天秤オモリを考えておりましたが、

2005年からいろいろと試作し、2007年秋のシーズンになってようやく納得出来るものが出来上がりましたのでご紹介します。

その名は「カッ飛びセンシィティブ天秤」センシィティブとは鋭敏、高感度の意味で、

固定式同様に安定した姿勢で良く飛び、飛行時の仕掛け絡みは少なく、さびく時は全遊動に近い高感度を有するものを考えました。

従来は相反すると思われていた事を克服出来ないかとキス釣り天秤の理想を私なりに追求してみたのです。

また、「簡単な道具と何処でも手に入る材料が有れば誰でも作れる」と言う事も大切な事で有り、作り易さも

考慮しました。このことは大切で、いかに高性能であっても、製作に手間が掛かったり、材料の入手が困難であれば、

一回の釣行で5個位は予備として持参する天秤ですし、毎回の釣行前の天秤の準備がおっくうになってしまいます。

更に、安価に作れる事ももちろん重要で、天秤は仕掛け程ではありませんが、ある意味消耗品ですし、

市販の天秤プラス僅かな出費程度で作れるようにしました。

安かろう、悪かろうは頂けませんが、安かろう、良かろうなら歓迎されるはずです。

最後に、いくら性能が良くても私は見た目が不細工なものは投げたいとは思いません、出来るだけスマートで、

シンプルな構造なものが良く飛んで余計なトラブルも少ないですし、天秤においても「シンプルオブベスト」では無いかと思っています。

さてっその天秤ですが、この寸法は私が何回も投げては試し釣りをし、

飛距離と感度を追い求めてほぼ最終的に決定したもので、天秤の上部の軸は約120ミリ、腕側の足は140ミリに設定しています。

これ以上の単純化も複雑化も、もう私では出来ない所までやった結果でありまして、

今のところ、飛距離は固定式と何ら遜色はありませんし、感度は

キスが140ミリ以内しか引っ張ら無い場合の感度は全遊動式と殆ど変わらず、

それ以上引くと固定式と同等となり、「天秤のバネ効果」がより強く働き、

大型キスでも向こうアワセで掛かります。

もちろんキスの引きが140ミリ以内でも道糸のテンションさえ失わなければ

天秤のバネ効果は全く損なわれず、食い込みの良さも固定式と殆ど変わりません。  

「こんな単純な形を考えるのに2年も掛かったの・・」と言われるのを承知で書いていますが、

針金を曲げては投げ、また曲げなおしては投げ・・の繰り返しで出来た形で、

よりシンプル、スマートさを求めて無駄を省き、作り易さも考えたものでして、今は自己満足とは思いますが気に入って使っています。

さてっその作り方ですが、工具はペンチ、(出来れば天秤の○穴加工用のペンチも有れば便利、)

100ワット程度のハンダごて、メジャーだけです。材料はいつも使っておられる天秤で固定式でも遊動式でも可。


それと、釣具店で販売している天秤製作用のステンレスバネ線で0.8〜1ミリ径の太さのもの、

ステンレス製のスリーブで内径1ミリ程度のもの(釣具店のイシダイコーナーに行くと、ワイヤーハリス用のスリーブが有り、

これを使うと便利。圧着部分が大きくなりますが、電気工事用の肉厚の圧着スリーブでも可)

ステンレスハンダ、ステンレスハンダ用フラックス。以上これだけです。

作り方ですが、先ず使う天秤の足の片側をオモリの付け根ギリギリに切断します。

もう片側は6センチ残してこれもカットします。6センチに切り落とした足を下の画像のように曲げます。

曲げ部分の角度は全部30度程度です。↓

足を曲げたら末端は直径4ミリ程度のやや長円形に曲げ加工します。

次に、使うオモリがトップガンの場合は1ミリのステンレス針金を15センチにカットし、

片方は力糸と繋がる部分に長円形の輪を作ります。

輪の幅は3ミリ程度となるよう細く曲げて作り、

ステンレスハンダで補強します。もう1本は仕掛けが取り付く腕の部分で先端に丸穴が出来るように曲げ加工して、

これもステンレスハンダで補強します。

この力糸と繋がる方の軸側に硬質のビーズを通してから、2本の針金をスリーブの内径1ミリのものに挿し込み、

ペンチでつまんで圧着し、ステンレスハンダで補強します。

2本の足が結合されたら、ペンチでスリーブ部分をつまんで腕の側を曲げて下の画像の様な形になるよう曲げます。

この状態でオモリ部分の足の末端に作った輪の中を天秤の軸が抵抗無く通過するように輪の角度を

なるべく天秤の縦軸(道糸側の軸)に対して直角に近い角度にするのがコツです。


針金に通したビーズはオモリ側の針金の末端の輪が仕掛けを取り付ける天秤の足の側に抜けて

しまわないようにする役目をします。

以上の簡単な加工だけで完成です。

この天秤は引くテンションが緩むと時としてこのように天秤の足とおもりの針金がクロスしてしまう事が考えられますが、

天秤側の針金の2つ折り部分の上部をVの字の形に曲げてあるので、

さびくだけでオモリが自身の重量でクルリッと回転し、正常な形になります。

海底を引いている時の様子ですが、これも浅い砂浜の波打ち際で引いて海中での様子を目視して確認しましたが、

ほぼこのような形で引かれてゆきます。↓

キスが引くと・・・↓のように天秤が穴の間を通って移動し・・アタリがガンガンと竿先に伝わります。(~o~)

よって天秤が自由に移動出来る140ミリの間はアタリがガンガン出ます。それ以上に引かれると穴どうしがくっつき、固定式と同様に

キスのアタリをオモリの重量が殺すようになりますが、完全固定では無いので固定式よりもアタリは強く感じられますし、

仕掛けを引いてテンションが緩まない限り、どの状態でも常に天秤のバネ効果は維持されていますので天秤のしなやかさによる

食い込みの良さも向こうアワセの効果も働き続けてくれます。

肝心の飛距離については無駄な物を一切取り付けておらず、固定式と比較して天秤の○穴が一つ多いだけなので飛距離面での

不満は全く感じられません。飛行中は↓の姿勢で飛び、オモリ側の足の○穴がビーズに

当たり固定式天秤と同様になりますので、オモリのフラつき、天秤のバタつき共に発生せず、安定してかっ飛びます。

天秤の足は通常時は広角に開いているのですが、飛行時は仕掛けにかかる空気抵抗で引かれて

ほぼ直角の状態になっていると思われ、仕掛け絡みも固定式と同様に殆ど発生しません。

各部の針金が空気の流れに対して斜めになっているので天秤の足が受ける空気抵抗が少なく、シンブルで良く飛んでくれる

形になったと思っております。



実釣では全く固定式と同様に扱えるのに、6色先でほんの7センチ程度のキスが掛かってもハッキリとアタリを捉えられます。

また、この天秤は高速さびきの時にとても引き易く、例え砂紋が大きい釣り場でも

オモリが自由に首を振って砂紋の山に潜り難いので、とても軽く引けます。

更に、天秤の針金を1ミリに交換するとより高感度になりますし、逆に0.6ミリにすると、近くで食う時も食い込みが抜群に・・と

天秤の足の長さや太さを変更する事で好みの調子にチューニングが出来ます。

但し、オモリ側の足は必ず天秤に最初から付いている物を使って下さい、

ここを細いものに換えたり強度が不足するものを使うとバワーキャスト時に輪が伸びますので、必ずお守り下さい。

更に、天秤とシンカー部分を分離出来るので、コンパクトに携行出来、天秤は砂紋バスター用のものと共通なので

オモリの交換も自由自在に行えます。

この天秤を使って高速で引いているときに20センチ級が飛び付いて来たら・・「ガッツンブルンブルン」と「それはもう辛抱たまらん・・」     

また、キスが5匹、そして6匹・・と次々に掛かるのが本当に良く判ります。

それはオモリの重量や海底とオモリとの摩擦に天秤が影響を受け難いからだと思います。

あ〜キスシーズンが待ち遠しいなぁ・・。(~o~)