イシゴカイの飼育

キス釣りのメインのエサと言えばイシゴカイですが、北近畿ではあまり鮮度の良いイシゴカイが手に入り難いのが難点。

それは、イシゴカイが九州や四国など温暖な地域で養殖され、

その養殖場から大阪や東京のエサ問屋に送られ、一旦水槽で保管されたものが

後日北近畿の釣具店にトラックに揺られて送られて来て、

またそこで水槽の中で保管され、ようやく私たちが購入する事になるのです。

結果として鮮度の悪い、しかも中間マージンや輸送費がかなり上乗せされた高価なエサを購入する事になります。 

よって私たちが釣行する時に京阪神方面から釣友が来てくれる時は

大都市のエサ問屋かで購入してもらって分けてもらいますが、

その鮮度と量は地元で購入するものと大差が有ります。

仕方なく地元の釣具店で購入した時は、あまり動かない、ふやけて傷付いているものや、

茶色一色で見た目にも食いが悪そうなエサを仕方なく使っていますが、

クーラーの中で死んでしまったり、食いが悪かったりして悩みの種です。

釣りは1に場所、2にエサと言われるように、エサが悪ければ腕でカバーが出来ず、どうしようも無いのです。

若いときは舞鶴湾にイシゴカイを掘りに行き、それを使っていましたが、

色あいと言い、動きと言い、地元の釣具店で購入したものとは

同じイシゴカイと思えない程の鮮度の差。

天然のイシゴカイは頭だけが黒く、背中の真ん中に血管が透けて見え、裏返すと真っ赤で

背中は薄い緑色。腹部から尻尾にかけても真っ赤な足がビッシリと並び、見ていても綺麗な虫で、キスの食いは素晴らしく、

殆どチロリなどは不要のキスに取って素晴らしいご馳走なのです。それが延々とトラックで運ばれ、

水質の悪い海水を満たした水槽で長時間保管されると、茶色一色の体色に変わり、動きが悪くなります。

ところが、養殖場から出荷されたばかりのイシゴカイは天然ものと同様の品質で殆ど遜色がありません。

養殖場ではビニールハウスの中に大きな浅いプールのような飼育槽が並び、

そこには海水では無くてタップリの砂が敷き詰められ、

上から海水のシャワーを一日数回散布して飼育しているそうで、

決してイシゴカイを海水中で飼育しているのではありません。

舞鶴湾で採れるイシゴカイも波打ち際の砂泥の中やゴロ石の裏側などに潜んで住んでいて、

海水がチャプチャプしているところよりも、

少し陸側の湿った砂の中だけで生活し、産卵の時以外は海中を漂ったり、泳ぐ事はありません。

海中に漂った瞬間に魚やエビに襲われてしまうでしょうし、夜行性で夜になると活発に活動して

砂の中のプランクトンなどを食べて生活しているそうです。

従って水槽の中でイシゴカイを長時間飼う事自体が本来無理なことであり、

湿った砂の中で飼育するのがイシゴカイには適しています。 

満潮の時に砂が濡れ、干潮の時には少し乾燥するようなところで

イシゴカイは住んでいるのです。私は当初、購入したイシゴカイが

余った時に勿体無いので次回の釣行まで活かせておこうと

海水を汲んで来てブクブクで酸素を与えつつ保存していましたが、死滅してしまう率が高く、

一匹が死ぬと海水が濁って連鎖反応のように全部のイシゴカイが死んでしまう事もありました。

そんな苦い経験から、今回は養殖場と同じような飼育方法とし、購入したイシゴカイを保存すると言うより

元気な姿に戻してやる事を考えつつ、飼育方法を考えてみました。

先ず準備する飼育槽ですが、

セメントを攪拌する大きなトレイを

購入しました。

長さ1.2メートル、幅70センチ、

深さ25センチのものです。

画像の奥側の地面に

10センチ角の材木を置き、

その上にこのトレイを置くと、

トレイが約15度程度の角度で傾きます。

手前側の部分に海水を

20リツトル程度注ぎ

奥側に海から採取した砂の土手を作って

海水をかけて湿らせます。

海水の中にはブクブクで酸素を補給し、

アオサなどの海草も入れています。

砂の土手を横から見るとこんな感じです。

土手の端が海水面に少しかかる程度に

しておくと、毛細現象で砂が海水を吸い、

常に湿った状態が保てます。
土手の奥側に購入したイシゴカイを置き、

上からコップで海水をかけてやります。
海水をどんどんと

かけてやると水が一旦溝に


溜まりますが、すぐに土手にしみこんで・・

海水が無くなると同時にイシゴカイは砂に

潜り始めます。薄茶色くていかにも食いが

悪そうな地元で購入したイシゴカイですが、

新鮮な海水をかけてやると、ようやく動きが

活発になって、1時間もすると殆ど

砂に潜ります。

暫く待っても潜らないものや、


切れて弱っているものは取り除きます。

このまま安静に休ませ。

朝夕一回、砂の土手に

海水をコップでかけて


やります。イシゴカイにとって一日2回の

「満潮」の状態を与えてやります。
数日経って、

砂から掘り出して動きが元気に

なったらエサを与えます。

養殖場では魚のすり身や

カツオブシのダシを

取った後のカスを与えるそうで、

文献によると、

匂いの強いエサを良く食べるそうですが、

私は買っているキンギョのエサを

一日ひとつまみ砂の土手に置き、

上から海水を

かけて与えてみましたが、暗くすると

這い出して来てエサの回りに集まって

食べています。

購入直後のイシゴカイ。

色が薄くて水っぽく、ヘロヘロです。

それが飼育して3日経つと・・・
色が赤みを帯びて来ます。活発に這い回り、

指で刺激を与えると伸びていた体が

一瞬にして縮み、

半分の長さに変化するように


なります。

砂から頭だけを出している状態で


刺激を与えると、これまた一瞬で砂の中に

隠れてしまいます。
5日後、頭は黒く、背中が薄緑になり、

背中の真ん中に血管が

ハッキリと見えます。


尻尾はより赤くなり、

細かい足も先端が赤く、


とても良く動きます。

刺激を与えると一瞬にして右側の

イシゴカイのように縮みます。

10日後、5日後と殆ど変わりませんが、

裏側はチロリのように真っ赤で、

表面には粘膜が戻り、みずみずしく

なって舞鶴湾の天然イシゴカイに

近い姿になりました。
釣り場に持って行くときは土手に海水を多く

流し、砂を崩すと中からイシゴカイが出て

来て、細かい目のネットで掬います。

手で砂を掘るとイシゴカイを傷付けるので、

注意。

今は春ですので保温も保冷もしなくて

元気に生育していますが、

養殖場ではビニールハウスで

飼育している事、

温暖な地域で飼育している事からも、

かなりの高温下でも日陰で砂が湿って

いれば砂の中は気化熱のお陰で涼しく、

飼育出来るそうです。逆に低温は危険で

夜間に冷え込んだ日は

海水が12度以下となり、イシゴカイは

殆ど縮んで動かずエサも食べませんが、

日中になり、暖かくなるとまた元気に

砂の中で動いています。

って事で未だこの状態で飼い始めて10日ですが、海水を土手にかけると、

砂がフィルターの役目をしてくれて水が濁りませんし、

海草も元気で青々として生育しています。

なるべく自然に近い状態になるようにして暫く飼い続けようと思いますが、

こんな簡単な飼い方で本当に猛暑の時期に耐えられるかどうか・・?。

日よけをかけようか・・なんて思ってはいます。

今後いろいろと試行錯誤しそうですが、飼っていると

何だかペツトのように愛着も沸き、針に刺すのが可愛そうな・・・(~o~)

それと、文献によると、高塩分濃度気味で買うのがコツだそうで、

気温が高くなると海水の蒸発量が多くて高塩分な水になるとは思いますが、

あまりにも海水が減るといけませんので蒸発する分より

少し少ない程度には真水を少し足しつつ飼おうかと思っています。

もちろん、釣りに行く度に海水をタンクに汲んでこようかと思っていますが、

意外に海水は濁らずに綺麗な状態を維持しそうなのと、

1日2回の海水シャワーを砂の土手にかけてやるだけで

今のところ元気に生育していますので殆ど手間もかかりません。

今後また変化や工夫が有れば追加していこうと思いますし、

チロリなんかも飼育出来ないかと思案しているところです。ではっまた
・・。