@ 北近畿に住むアイナメの生態

北近畿では2月初旬あたりから3月末までの2ヶ月間、山からは雪解け水が大量に流れ込み、

北からは冷たい季節風が強く吹き付け、最も海水温が低下します。

大体水温が10度を切る頃になるとカレイも極端に食いが落ち、

春の戻りカレイ(花見カレイ)の時期まではカレイを釣りに行っても一日1〜2枚釣れたら

よい方で、この厳寒期はより低水温を好むアイナメを狙うほうが好釣果となることがままあります。

ご存知のようにアイナメは寒流系の魚で、夏よりも冬に活性が高まり、寒い北海道では年間を

通じて釣れますが、北近畿では12月初旬から4月末頃まで、大体水温が13度以下となる季節が

釣季となります。

北近畿でのアイナメの産卵期は12月から1月初旬頃となり、

水温が約14度以下になると雄は婚姻色に変わり、

雌と共に藻が多く繁茂した浅い岩礁帯に接岸し、海草に産卵します。

そして水温が12〜10度以下となるまでは卵は孵化せず、海草に付着していますが、厳寒期が訪れると

次々と孵化し、稚魚が海草の間を群れをなすように泳いでいるのが観察出来ます。

生まれた翌年の春には数センチまで成長し、稚魚の時から縄張り意識があるため、集団で孵化した稚魚たちは

岩場に散らばって生活し、夏の訪れと共に水温が低い深い場所に移動し、また晩秋になったら

浅場に戻って来る・・と言う繰り返しで一年を過ごし、少しづつ成長してゆきます。

成魚は北近畿では40cm余りまで成長し、その大きさになるまでに約5年かかります。

40センチ級では水深10メートルまでの、投げ釣りで狙いやすい比較的浅い場所でも釣れますが、

50cm級となると丹後半島の深い岩礁や水深が20メートル近い伊根湾の一部など、

釣れる場所がかなり限定されます。

カレイは特に雪解け水を嫌い、大雪が降ると釣果も極端に落ちますが、アイナメは殆ど影響を受けず、

縄張りを持って居付いている場所には厳寒期でも毎年接岸しています。

エサは住んでいる場所から海草の中に隠れているエビや小魚を主食とし、投げ釣りで良く使われるムシエサは

ゴカイ類が多く住んでいる浅い砂泥底にアイナメが好んで住んでいるのでは無い為、

決して主食ではありません。

ただ、主食では有りませんが、いわゆるバチ抜けと呼ばれるゴカイ類の繁殖活動時には好んで捕食し、

普段は岩場でエビや小魚しか食っていないアイナメも、ムシエサが目の前に居れば、好んで食って来ます。

また、
動く物に敏感に反応し、小動物を目で追って捕食するため、視力が発達し、エビ等は一気に捕食すべく

魚体の割りには大口で、かなり大きな小魚でも捕食が可能です。

特にウロコのように
光る物には大変良く反応し、例えばサバの切り身をエサにした場合は光る皮が

付いている場合と身だけの場合とては極端に食い込みに差が出るようです。

そしてカレイのような極端な時合いは無く、潮時、まづめ時なども多少は釣果に影響しますが、

目の前に動くエサが有れば殆ど食い付き、時合い以外はエサに見向きもしないカレイよりは

釣れる時間帯を余り気にせず釣る事が出来ます。

次に、魚体の大きさによってかなり住処が違うのもアイナメの特徴で、

30センチまでのものは宮津湾などでは浅い砂地に繁茂するアマモと呼ばれる藻場に沢山生息しており、

浅くて大きな外敵となる魚が余り回遊しない、水深3メートル前後の場所で、

藻の密度が高い所に沢山居ます。

この身を隠す事が出来る藻の間でじっとエサが近づくのを待っており、

大きな根魚が居て食われてしまうような深い岩礁よりも沢山住んでいます。

30センチを超えると水深5メートル程度のゴヅゴツの岩礁帯や、シモリ混じりの砂地では深い場所で

ホンダワラなどの藻が海底から水面までびっしりと繁茂しているような場所に沢山居ます。

そして40センチを超える成魚になると外敵にも食われてしまう事が無いサイズなのか、

悠々と自分の隠れ家から砂地へも回遊し、水深が10メートル以上の場所なら

何も隠れる場所が無いような完全な砂地にも出て活発にエサを追うようになります。

また、40〜50センチ級ともなると身を隠さずに広い岩礁の上にも出て来て、岩に張り付き

海底から少し上を泳ぐ小魚の群れを待っており、ヒラメのように一気に襲いかかり、

吸い込むように捕食活動もしているようです。

そして魚体が大きくなるにつれ、大量のエサが必要となる事から、一匹の個体が持つ縄張りも

魚体の大きさに比例して広大となり、単一面積に居る魚体数も少なくなります。

よって大きなアイナメが居る釣り場ほど、一旦そこのアイナメが釣られてしまうと、

元のアイナメの生息数に戻るまでに時間がかかり、釣り人が多い釣り場では、

いわゆる「釣り荒れ」が良く起こるのも事実です。

従って30センチまでの数釣りなら浅いアマモ帯を、一発大物を狙うなら

普段余り釣り人が多くない、ドン深となった岩礁帯や

その岩礁と砂地の境目あたりが狙い目となり、大きくなるにつれ、隠れ家となる藻に依存しなくなって

くるので、荒れの日には強く波が打ち寄せて藻が余り成長しないような、外海に面した岩礁が

冬場は釣り荒れも少なく、好ポイントとなります。

以上、アイナメの生態の特徴からまとめますと、「30センチ級までなら浅場の藻を、

それ以上の大物は、深い場所の岩や、岩と砂地の境目を狙え」

と言う事になり、アイナメにエサを食わす為には、

「目立ちやすい動くエサを目の前に落としてやれ」と言う事になります。