テクニック編 そのN 波が有る時は払い出しで釣る


遠浅の浜でキス釣りをする時、浜に着いたら波が高くて躊躇してしまう事もありますが、

夏から秋の高水温期は多少波が有るほうが海水の酸素濃度が高まり、

キスの活性も高まり、2メートル以下の波で有れば、波は浜全体に立つ事は

少なく、浜を良く観察していると、必ず波の弱い部分がみつかります。

その波の弱い部分を私達は「払い出し」と呼び、正式には「離岸流」と言いますが

その離岸流を上手く利用すると、高波の日でもキス釣りを楽しむ事が出来ますし、

キスもこの流れにに集まるので、100匹を超える好漁も十分期待出来ます。

「離岸流」と一言に言っても判り辛いので簡単に説明しますが、

海上保安部の海水浴場での離岸流に対する注意書きから引用しますと、離岸流は

海水は波によって沖から海岸に打ち寄せられますが、海岸に打ち寄せられて行き場を失い溜まった水が今度はある場所で沖へ強く流れる通り道ができます。
これが「離岸流」りがんりゅうです。
発生場所
1.海岸が外洋に面しているところ
2.海底の勾配は緩い遠浅で、海岸線が長いところ
3.波が海岸に対して直角に入る海岸
  以上の3つを充たしている海岸


離岸流の特徴
幅は10〜30m、流速は毎秒2m以上になることもあり、これはオリンピックの水泳選手でも逆らって泳ぐことが困難な程の強い流れです。

離岸流からの脱出方法
岸に平行に泳ぎ離岸流から抜け出してから、岸に向かって泳いでください。
決して流れに逆らって泳がないこと。体力を消耗するだけです。
まず落ち着いて、岸と平行に泳いでください。

http://www.kaiho.mlit.go.jp/08kanku/ より引用しました。

と離岸流にさらわれて溺れる人が後を絶たない為に注意を呼びかけており、

これによって判る事は発生場所はキスの好む遠浅の砂浜で、広くてだらだらと深くなる

場所で有る事、

離岸流はとても早い流れで、毎秒2メートルにも達する事、

そして、離岸流の幅は10メートルから30メートルの幅で有る事がリンク先の説明図から

も良く判ります。下の図は私が書いた簡単な概念図ですが、

北近畿ではこの離岸流が出来やすい浜として、浜詰や葛野、平浜などが有り、

波高が1〜2メートルの時に最も目立つようになります。

これより低い波の時は離岸流も流れが弱く、目立たないようになりますし、

3メートルを超える波の時は、浜全体に大波が打ち寄せる状態で、これまた、

離岸流は消滅し、仕掛け絡みが多発しますし、キスも居なくなります。

また、離岸流と次の離岸流との間隔は大体100〜200メートルとなる事が多いですが

これは地形や砂の質によって左右されるようです。

そして、離岸流が流れている所では砂も沖に流される為に大体3メートル程度の水深となり、

流れに方向と波の方向が対向している為に、波は静まり、そこだけが穏やかになります。

逆に流れが浜に向って流れている部分では、波も弱まらず、砂が流されてきて溜まるので

浅くなり、特に浅い部分で波が大きく砕けます。

また、引用文より、波が浜の海岸線に対して斜めに押し寄せる場合はこの離岸流は

発生しにくく、真正面から波が来る場合に顕著になります。

よって、離岸流を上手く利用するには、なるべく真正面から波が来る場所で釣るほうが

有利になりますが、波の方向は風向きや沖の気圧配置によって変わりますので、

浜に入る前に高台から海面を眺めて波の方向を確認する事と、もし斜めからの波だったら

場所の移動も考える必要が有ります。

幸い、北近畿の各浜は北陸や山陰の直線的な浜と違って、

大きく見ると「弓形」をした浜が多く、波の方向に合わせて釣る場所を選ぶ事が

出来ます。

例えば、久美浜の海岸の例で説明しますが、上の簡単な地図で、真北からの波の時には

箱石で竿を出すと払い出しが交互に現れてキス釣りを楽しめるのに対し、

浜詰では、斜め右前方からの波が押し寄せ、波に押されてどんどんと左に仕掛けが

流されます。逆に葛野では右に向って流れる潮が強くなり、

全面が波に覆われ、釣り辛くなります。それに加えて厄介な流れ藻も多く、横方向の潮で

流されて来て、特に浜の末端に沢山溜まってしまいます。

また、北西からの波の時には浜詰が良くなり、北東からの波の時には葛野が

真正面からの波となり、釣り易くなります。

さて、この払い出しが好ポイントとなる理由ですが、先ず回りより深くて波が小さい事は

先に述べましたが、この流れは波打ち際から沖に向う為、波打ち際で発生したプランクトンが

集まって流れて来る為に、キスもそのエサを追って集まり、群れとなって泳いでいます。

また、沖に向って早く流れている為に、仕掛けがピンと伸ばされて、絡みにくく、キスの食いも

良い。更に流れに逆らって波打ち際に頭を向けて泳いでいるキスから見れば、

殆ど引かなくても高速で引いているのと同じ効果が有り、追い食いが期待出来る事。

変則的な波が払い出しの上を通過しても、底から掻き回されず、仕掛けの絡みが

無いなど、キスを釣る上で好都合な事が多く有ります。

良い払い出しを見付けたら、群れも散らず、

同じ場所で釣り続けられ、回りは波が高い為に、オモリの着水音も

殆ど打ち消されて更にキスが散りにくい、好ポイントとなります。

北近畿では秋になるとこの1〜2メートル程度の波が立つ日が多くなりますが、

払い出しには大型キスも多く集まり、毎年10月から11月には25センチを超えるキスも

良く釣れます。

また、真正面からの波の時は良いのですが、運悪く波の方向が少し斜め気味の時は、

払い出しに直接投げ込んでも、仕掛けが流されて払い出しから出てしまう為、

逆に少し潮上にオモリを着水させ、流れに押させて払い出しに上手に仕掛けを

入れてやります。 払い出しの中でも、その流心よりも両側の、沖への流れが弱い場所に

キスは多く群れています。よって、払い出しを斜めに横切るような引き方も有効で、

払い出しに入って行く落ち込みの部分と、払い出しから引き上げるカケアガリの

二つの好ポイントを一回のさびきで楽しめ、沢山のキスを針掛かりさせる事が

出来ます。当然ながら、落ち込みの部分では仕掛けが緩まないように高速で、

カケアガリでは低速で、とオモリの重みがしっかり感じられるようなスピードで

引く事が大切ですが、払い出しを上手く攻略出来ると、かなりの波の日でも

好釣果を揚げる事が可能となります。

逆に払い出しや波の方向を意識せず、漫然と一箇所で粘ったり、安易に

移動のみしていたら、こちらに向って流れてくる流れの中に仕掛けを投入してしまい、

仕掛けを絡ませてばかりで、キスの薄い所を引く結果となり、

釣果の差は凪の時よりかなり大きくなります。 50メートル隣ではバコバコなのに

こちらは仕掛けのトラブルばかりでキスは殆ど釣れない・・・なんて状況が

特に秋の落ちギスの時期、特に白波の立つ日には多くあります。

50メートルも移動したら状況が一変してバコバコッなんて事が多々ありますので、

海面を良く観察して、投げる場所を決める事が特に大切です。

波が高めの時には一目で場所は判りますが、波が低い時や、

慣れない内は流れ藻や木の葉が沖に向って流されて行く所を見付ける

のも払い出しを見分けるコツです。